
制作会社の進行管理が属人化する最大の原因は、ディレクター個人の頭の中に進行状況が閉じ込められていることです。「あの案件どうなってる?」と聞かないと分からない状態が常態化しているなら、それは属人化のサインです。この記事では、制作現場でよく見る属人化の3パターンと、明日から始められる解消ステップを5つに分けて解説します。
制作会社の進行管理が属人化する3つの典型パターンとは?
「属人化」という言葉は聞くけれど、自社がどのパターンに当てはまるのか分からない。まずは現場でよく見る3つの典型パターンを整理します。
パターン1:ディレクターの頭の中にしかない進行表
最も多いパターンです。ベテランディレクターが案件の進捗・クライアントの温度感・次のアクションをすべて記憶で管理しています。本人は問題なく回せていても、そのディレクターが休んだ瞬間に案件が止まります。
- 「Aさんに聞かないと分からない」が週に3回以上ある
- 引き継ぎ資料がSlackの過去ログしかない
- 新人が入っても案件に入れるまで3ヶ月かかる
パターン2:情報がSlack・メール・シートに散らばっている
進行管理をしていないわけではない。Slackで指示を出し、スプレッドシートに案件一覧を作り、メールでクライアントとやり取りしている。でも情報の在り処がバラバラで、全体像を把握するには3つのツールを行き来する必要がある状態です。
- 修正指示がSlackの複数チャンネルに散らばっている
- 「あのファイルどこにあったっけ?」が毎日発生する
- スプレッドシートの更新が追いつかず、実態と乖離している
パターン3:特定の担当者しかクライアント対応できない
「あのクライアントは田中さんしか対応できない」という状況。クライアントとの信頼関係は大事ですが、それが組織のボトルネックになっていませんか。
- 担当者の有給消化率が極端に低い
- クライアントから「担当を変えないでほしい」と言われている
- 案件の再配分ができず、特定メンバーだけ残業が多い

属人化が招くリスクはどれほど深刻か?
「今は回っているから問題ない」。多くの制作会社がそう考えています。しかし属人化のリスクは、問題が起きるまで見えないのが厄介な点です。
退職・休職で案件が止まるリスク
ディレクターが突然休んだとき、他のメンバーが案件を引き継げるでしょうか。進行中の案件のステータス、クライアントへの次の連絡予定、デザイナーへの修正指示の内容。これらが引き継げなければ、納期遅延は避けられません。
新人が育たない・離職する悪循環
属人化した現場では、業務が「見て覚える」方式になりがちです。マニュアルもなければ、過去案件の進行履歴も残っていない。新人は質問するたびにベテランの手を止め、ベテランは「自分でやった方が早い」と感じる。結果、新人は成長できず辞めていくという悪循環が生まれます。
売上の天井が見える
ディレクター1人が管理できる案件数には限界があります。属人化した状態では、案件を増やしたくても受けられない。外注に出すにも進行管理の仕組みがないから品質を担保できない。組織の成長が特定個人の処理能力に縛られます。
明日から始める属人化解消5ステップ
属人化の解消は、大がかりなシステム導入から始める必要はありません。以下の5ステップを順番に進めれば、小規模チームでも無理なく取り組めます。
ステップ1:案件と進行状況を1つの場所に書き出す
まずはディレクターの頭の中にある情報を外部化します。スプレッドシートで十分です。
書き出す項目は最低限この5つ。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 案件名 | ABCコーポレート LP制作 |
| 現在のフェーズ | デザイン修正中 |
| 次のアクション | 4/18にクライアント確認依頼 |
| 担当者 | 田中 |
| 納期 | 5/15 |
案件管理テンプレートの詳しい項目設計はこちらの記事で解説しています。
ステップ2:「誰が・いつ更新するか」のルールを決める
書き出しただけでは属人化は解消しません。更新ルールを決めます。
- 案件のステータスが変わったら、その日のうちに更新する
- 毎週月曜の朝に全案件の棚卸しをする(15分で十分)
- 新規案件は受注した時点で登録する
ルールはシンプルにするのがコツです。細かすぎるルールは守られません。
ステップ3:クライアント対応の履歴を残す
「田中さんしか分からない」を解消するには、クライアントとのやり取りを記録する仕組みが必要です。
- Slackでのやり取りは案件チャンネルに集約する
- メールでの重要な決定事項は案件管理シートに転記する
- 口頭での合意事項は議事録としてテキストに残す
ポイントは全てを記録する必要はないということ。「次に誰かが引き継ぐときに困る情報」だけを残せば十分です。

ステップ4:週次の進捗共有を習慣化する
週1回、15分のミーティングで全案件の進捗を共有します。目的は「全員が全案件をうっすら把握している状態」を作ること。
確認する内容は3つだけ。
- 今週完了した案件はあるか
- 遅延リスクのある案件はあるか
- 来週のリソース配分に問題はないか
この習慣が定着すると、ディレクターの負荷が分散され、メンバーが自律的に動ける組織に変わっていきます。
ステップ5:進行管理ツールに移行する
ステップ1〜4をスプレッドシートで運用してみて、「更新が面倒」「情報が見づらい」と感じたら、専用ツールへの移行タイミングです。スプレッドシートで運用した経験があるからこそ、ツールに何を求めるかが明確になります。
複数案件を同時に回すコツも参考にしてください。
小規模制作チームに合う進行管理ツールの選び方は?
ツールは導入して終わりではなく、チームに定着してはじめて意味があります。2〜10人の制作チームがツールを選ぶ際のポイントを整理します。
制作チームがツール選びで失敗する3つのパターンとは?
- 多機能すぎるツールを選んでしまう:ガントチャート、リソース管理、工数管理...。機能が多いほど設定に時間がかかり、使いこなす前にチームが疲弊します。
- 無料プランにこだわりすぎる:無料だが制限が多いツールを使い続け、結局スプレッドシートに戻る。月額数千円の投資で解決できるケースが大半です。
- 大企業向けツールを導入してしまう:JiraやAsanaは強力ですが、小規模チームには設定項目が多すぎる場合があります。
制作会社に合うツール3選
| ツール | 月額(1人) | 特徴 | 向いているチーム |
|---|---|---|---|
| Backlog | 無料〜 | ガントチャート・Wiki・Git連携が充実 | エンジニアがいるチーム |
| Jooto | 無料〜 | カンバン形式で直感的。導入ハードルが低い | デザイン中心のチーム |
| TASKUL | 無料〜 | AIがタスクを自動生成。依頼文コピペで工程設計 | フリーランス〜小規模チーム |
Backlogは開発チームとの連携に強く、エンジニアが在籍する制作会社にはフィットします。Jootoはカンバン形式でデザイナーにも馴染みやすい。TASKULはクライアントからの依頼文をコピペするだけでAIがタスクと工程を自動生成するため、案件立ち上げの手間を減らしたいチームに向いています。
フリーランスのタスク管理術では、個人で案件を回す場合のツール活用法も紹介しています。
ツール導入時に決めておくべきルールとは?
ツールを入れても運用ルールがなければ定着しません。最低限、以下の3つを決めてからスタートしてください。
- タスクの粒度:「デザイン」ではなく「トップページワイヤーフレーム作成」「下層ページデザイン」のように分解する
- ステータスの定義:未着手/進行中/レビュー待ち/完了の4段階が基本
- 更新タイミング:ステータスが変わったらその日中に更新する

まとめ
制作会社の進行管理が属人化する原因は、情報がディレクター個人に閉じていることに集約されます。
解消のための5ステップをおさらいします。
- 案件と進行状況を1つの場所に書き出す
- 「誰が・いつ更新するか」のルールを決める
- クライアント対応の履歴を残す
- 週次の進捗共有を習慣化する
- 進行管理ツールに移行する
いきなりツールを導入するのではなく、まずはステップ1の「書き出し」から始めてください。スプレッドシートでもホワイトボードでも構いません。ディレクターの頭の中にしかなかった情報が可視化されるだけで、チームの動き方は変わります。
ツールへの移行を検討する段階になったら、TASKULの無料プランで案件管理を試してみてください。依頼文をコピペするだけでAIがタスクを自動生成するので、ゼロから項目を設計する手間を省けます。


