制作の途中で、取引先から「担当が変わります」とメールが届いた。「前任の方にはお礼を返せばいいとして、後任の方には何を伝えればいいのか」「前任の方と電話で決めたことは、ちゃんと引き継がれているのか」と手が止まっていませんか。
担当者変更の連絡への返信は、前任者へのお礼の1通と、後任者に送る「進行中の案件の今」の確認表つきの1通に分けます。確認表には、決まっていることとその出どころ、先方にお願いしている作業と期限、こちらの作業と次に送る日、納期、請求の予定を書き、前任者と口頭で決めたことは「要確認」に回します。
8項目の確認表と、架空の取引先1社・2案件の記入例、直して使える例文3通を載せました。
この記事は、制作の仕事を個人で受けていて、進行中の案件の途中で取引先の担当者が変わった人向けです。社内の異動の挨拶にどう返すかだけを知りたい会社員の方向けではありません。
最後に、取引先ごとの案件と確認待ちを書き出す手間を減らす方法も、できないことと合わせて紹介します。
担当者変更の連絡が来たら、返信で何を送る?
前任者には、これまでのお礼と「後任の方に案件の状況をお送りします」という返信を、連絡が来た日のうちに送ります。後任者には別の1通で、進行中の案件ごとの「決まっていること・先方にお願いしている作業・納期・請求の予定」を確認表にして送ります。
前任者が担当のうちに後任者へ送れば、食い違いを前任者に確かめられます。
左の1通が例文①、右の1通が例文②にあたります。
次の例文は、架空の取引先「株式会社サンプル商事」の鈴木さんから、11月9日(月)に担当者変更の連絡が来た場面で、前任者の鈴木さんに返す1通です。鈴木さんは11月13日(金)まで担当で、11月16日(月)から高橋さんが担当になります。
お礼のあとに、後任者へ何をいつ送るかを書いておくと、前任者は担当のうちに引き継ぎの漏れを指摘できます。お礼に添える1文は、実際にあった出来事を1つだけ書けば十分です。前任者が退職される場合は、「新しい部署でのご活躍をお祈りしております」を「今後のご健康とご活躍をお祈りしております」に替えます。
前任者への返信と、後任者への連絡を分ける
前任者への返信に後任者への確認事項まで書くと、お礼の1通が長くなり、後任者は自分に向けた部分を探して読むことになります。前任者にはお礼、後任者には確認表、と宛先ごとに1通ずつにします。
担当者変更のメールに後任者がCCで入っているときも、全員に返信するのはお礼の1通だけにします。後任者への確認表は、後任者を宛先、前任者をCCにした別のメールで送ると、後任者が後から探しやすくなります。
進行中の案件があるときだけ、確認表をつける
納品も請求も済んで、次の依頼がまだない取引先なら、前任者へのお礼と、後任者への「今後ともよろしくお願いいたします」の短い挨拶で足ります。確認表が要るのは、作業中の案件か、請求や入金がまだ残っている案件がある取引先です。
月額の保守のように毎月続く仕事も、進行中の案件に入れます。毎月の締め日や作業の範囲を後任者が知らないと、次の月の依頼や請求で行き違いが起きるからです。
担当者変更の返信で後任者に伝えること(引き継ぎ確認表の8項目)
確認表には次の8項目を書きます。①〜⑦は案件ごとに、⑧は取引先ごとに1回書きます。右の列は、その項目が後任者に伝わらなかったときに起きやすいことです。
進行中の案件が3件あれば、①〜⑦を3列ぶん書き、⑧は最後に1行だけ添えます。
次の記入例では、案件Aと案件Bの2列に①〜⑦を書き、⑧は2列をまとめた1行にしています。
決まっていることには、決めた日とメールの件名を添える
後任者は、前任者のメールをすべて読んでから担当につくとは限りません。「金額30万円(税別)」だけでなく、「10月5日(月)送付の見積書」のように出どころを並べて書きます。
件名が分かれば、後任者は前任者や社内の人に、どのメールかを伝えて確かめてもらえます。
取引先ごとの取り決めを日ごろから表にしているなら、その表の根拠の列をそのまま写せます。表をまだ作っていない人は、この機会に1社1行で残しておくと、次に担当者が変わったときも同じ表から確認表を作れます。
作り方は、取引先ごとの取り決めと根拠を残す顧客管理表の作り方にまとめています。
先方にお願いしている作業は、案件ごとに1行で書く
後任者が最初に知りたいのは、自分が今週なにをすればいいかです。③と④は「先方:デザイン修正案の確認(11月12日(木)まで)」のように、誰がする作業かを先頭に書きます。
先方にお願いしている作業が無い案件は「先方:なし」と書きます。空欄にすると、書き忘れなのか、本当に無いのかを後任者が判断できません。
担当者変更の返信に添える引き継ぎ確認表の記入例
架空の取引先「株式会社サンプル商事」で、進行中の2件を埋めた例です。案件AはLP制作の途中で、デザイン案の2回目の修正を先方が確認しています。
案件Bは月額の保守で、毎月のお知らせ更新と請求があります。金額は記入の形を示すための架空の数字で、相場ではありません。
案件Aは、③の確認の返事が11月12日(木)に来れば、④のテスト環境を11月24日(火)に送り、11月30日(月)に公開できます。⑦の写真が11月20日(金)までに届かないと、11月30日(月)の公開に響きます。この取り決めはメールに残っていないため、決まったこととして書かず、要確認に入れています。
前任者と電話で決めたことは「要確認」に入れる
電話や打ち合わせで決めたことは、こちらのメモには残っていても、先方の社内には残っていないことがあります。メールで記録の無い取り決めは、②に書かずに⑦の要確認に入れます。
決まったこととして送ると、後任者は前任者に確かめないまま進め、あとで「その話は聞いていない」となりがちです。
記入例では、10月28日(水)の電話で決めた写真の撮り直しが、右側の「要確認」にあたります。
公正取引委員会のフリーランス法のQ&Aも、発注の合意について「口頭でも構いませんが、トラブル防止の観点から、記録に残る方法によることが望まれます」としています(公正取引委員会「フリーランス法Q&A」Q37)。担当者の交代を定めた説明ではありませんが、口頭で決めたことを文字に残す理由は同じです。
要確認に入れて後任者から返事をもらえば、その返事のメールが新しい出どころになります。
コピーして使える確認表のテンプレート
次の枠はタブ区切りです。そのままコピーしてスプレッドシートに貼ると、項目と案件の列に分かれます。案件が3件以上なら、列を右に足します。
項目 案件1 案件2
①案件名と今の工程
②決まっていること(金額・範囲・修正の回数)と出どころ(決めた日・メールの件名)
③先方にお願いしている作業と期限
④こちらの作業と、次に送る日
⑤納期
⑥請求の予定(着手金・残金・締め日・まだの分・宛名)
⑦要確認(口頭で決めたこと・決まっていないこと)
⑧後任者の連絡先と、承認する人
この記入例では、2案件×7項目の14マスと⑧の1行を、見積書・発注メール・契約書・送った請求書・入金の記録・電話のメモを見返して埋めました。取引先の担当者が変わるたびに、案件を全部書き出し、先方にお願いしている作業と期限を拾い直す作業が発生します。
進行中の案件が多い取引先ほど、この拾い直しに時間がかかります。
社外の後任者に送る担当者変更の返信メール例文
確認表ができたら、後任者に最初の連絡を送ります。前任者への返信(例文①)で「明日お送りします」と書いた日に送り、返事の期限は前任者の最終日にそろえます。
例文② 後任者への最初の連絡(確認表つき)
質問は、確認表の⑦と⑧の要確認だけに絞ります。決まっていることまで「よろしいでしょうか」と聞くと、決め直してよいものに見えてしまいます。②の行は事実として表に書き、質問の欄には入れません。
担当者が変わった時の挨拶が後任者から先に届いたら
こちらが送る前に、後任者から着任の挨拶が届くこともあります。そのときは新しいメールを立てずに挨拶へ返信し、件名は「Re: 担当者変更のご挨拶」のままにします。変えるのは冒頭の1文だけで、2文目からは例文②と同じです。
後任者の挨拶への返信は、前任者の鈴木さんをCCに入れて送れば、前任者にも確認表が届きます。
例文③ 後任者が決まっていない・引き継ぎが済んでいないとき
「後任は追って連絡します」とだけ書かれていたら、前任者に、それまでの間に誰に確認を出せばいいかを聞きます。止まる作業と続ける作業を分けて書くと、先方は何を急いで決めればいいかが分かります。
この返信にも返事が来ないまま期限が過ぎたら、催促の連絡に切り替えます。窓口を変えて送るときの書き方は、返事が来ないときの催促の文例と、担当者以外の連絡先への送り方にまとめています。
ChatworkやSlackで連絡が来たときの短い返信
チャットで担当者変更を知らされたときは、前任者へのお礼を3行に縮め、確認表はメールで送ると書き添えます。表はチャットでは崩れやすく、後から探しにくいためです。
公取委のQ&Aは、チャットなどで受けた発注について、メッセージが削除されたり見られなくなったりすることがあるため、スクリーンショットなどで保存しておくことが望ましいとしています(同Q&A Q41)。前任者がチャットで送ってくれた担当者変更の連絡も、画面を保存しておくと、確認表の出どころとして使えます。
取引先の担当者が変わって、前の約束と違うことを言われたら?
まず、決めた日とメールの件名を添えて、事実の確認として聞き返します。後任者の言うとおりに範囲や金額を変えるなら、追加見積か見積の出し直しにして、新しい条件を文字に残します。どちらにするかは、後任者の返事を見てから決めます。
決めた日とメールを添えて、事実の確認として聞く
たとえば後任者から「デザインの修正は何回でも対応いただけると聞いています」と返ってきたとします。確認表の②には「デザイン案の修正は2回まで」と書き、出どころの見積書も添えてあります。
ここで「それは違います」と言い返すと、後任者は前任者を疑うか、こちらを疑うかを選ぶことになります。
そこで、次のように出どころを並べて、どちらが正しいかを一緒に確かめる形で聞きます。
前任者がまだ担当のうちなら、前任者をCCに入れて聞くと、その場で事実が確かめられます。前任者が担当を外れたあとなら、後任者に社内で確かめてもらう形にします。
範囲や金額を変えるなら、追加見積か見積の出し直しにする
事実を確かめたあとの進め方は、後任者が何を変えたいかで3つに分かれます。どれも、前の取り決めを口頭のまま上書きせず、新しい条件をメールに残してから作業に入ります。
修正の回数やページを増やしたいと言われたとき
後任者が「修正をもう1回増やしたい」「ページを足したい」と言うなら、それは新しい依頼です。増えた分を追加の見積にして、返事をもらってから作業に入ります。書き方は増えた作業を追加見積で伝えるメール例文にまとめています。
金額を下げてほしいと言われたとき
金額だけを下げると、前の範囲のまま安く引き受けることになります。作業の範囲を減らして、見積を組み直せるかを先に考えます。範囲を減らして金額を下げる組み直し方は、値下げを頼まれたときに見積を出し直す手順の記事で扱っています。
金額や支払期日がそもそも決まっていなかったとき
確認表を作ってみて、金額や支払期日の欄が埋まらなかった案件は、後任者と一から決めることになります。発注の条件を確かめる8項目を使って、足りない条件をまとめて聞きます。
取引先の担当者が変わったときの引き継ぎをTASKULで楽にする手順と、できないこと
確認表を作るときに手作業でしていたのは、次の5つです。
- その取引先の進行中の案件を全部書き出す
- 案件ごとに先方にお願いしている作業と期限を拾う
- 前任者と口頭で決めたことをまとめる
- 後任者の名前と連絡先を控える
- 確認表を書いて送る
TASKUL(タスクル)では、1つ目と2つ目はクライアントの詳細画面の1つのタブで、案件とタスクの状態・期日を並べて見られます。3つ目と4つ目は同じ画面の別のタブに残せます。5つ目の、確認表を書いて送る作業は手で残ります。
図の2行は、記入例の案件Aと案件Bで先方にお願いしている作業です。
この操作はFreeプラン(プロジェクト10件まで・AIクレジット月200)で試せます。「AIで整理して保存」と依頼文からの案件作成はAIクレジットを使い、貼った文面はAIの分析のためにサーバーで処理されます。最初は取引先名や金額を伏せた文面で試すと安心です。
「プロジェクト一覧」で進行中の案件と確認待ちを見る
- 左のメニューの「クライアントリスト」を開き、株式会社サンプル商事を選ぶ
- クライアントの詳細画面の「プロジェクト一覧」タブを見る。その取引先の案件ごとに、タスクが状態と期日つきで並びます
- 先方の確認や素材を待っているタスクは、状態を「確認中」にし、期日に先方の期限を入れておく
状態は「未着手」「進行中」「確認中」「納品待ち」「完了」の5つです。先方にお願いしている作業を「確認中」にそろえておくと、この画面を上から見るだけで確認表の③を写せます。ただし、前任者と口頭で決めた作業(記入例では写真の提出)は③ではなく⑦の要確認に移します。
先方の作業は、タスク名の頭に【先方】と付けておくと、自分の作業と見分けられます。
株式会社サンプル商事の「プロジェクト一覧」タブです。LP制作と保守の2件がタスクを開いた状態で並び、【先方】から始まる先方にお願いしている作業の3件は、状態を「確認中」にして期日を入れています。このうち写真の提出は、記入例では③ではなく⑦の要確認に入れています。11月10日(火)に確認表を書く時点の画面です。データは架空です。
まだTASKULに入れていない案件は、同じタブの「新規プロジェクト作成」から「依頼文・議事録から自動作成」を選び、前任者とのやり取りのメールを貼って作れます。TASKULのAIは、依頼文に日付が無い作業の期日を推測で埋めないように作られています。先方の期限は自分で入れます。
前任者と決めたことを「営業・商談ログ」に残す
- 同じ画面の「営業・商談ログ」タブを開く
- 「会議メモを追加」の欄に、10月28日(水)の電話のメモと、担当者変更のメールの要点を貼る。欄の下の日付には今日の日付が入っているので、必要なら直す
- 「AIで整理して保存」を押す。メモが「商談内容」「相手の特性・刺さった点」「リスク・懸念事項」「ネクストアクション」に分けて残ります
「営業・商談ログ」タブの「会議メモを追加」に、10月28日(水)の電話のメモと、担当者変更のメールの要点を貼った画面です。「AIで整理して保存」を押す前の状態です。データは架空です。
AIの解析に失敗したときは、貼った原文だけが保存されます。整理されたネクストアクションは、そのまま確認表の⑦の要確認を書くときの下書きに使えます。AIが分けた中身は貼った文面によって変わるので、必ず読み直してから写します。
後任者の名前と連絡先を「メモ」に書く
- 「クライアント情報」タブを開く
- 「メモ」の欄に、後任者の名前・メールアドレス・担当になる日と、前任者の最終日を書いて「保存する」を押す
「クライアント情報」タブの「メモ」に、後任の高橋様の名前とメールアドレス、担当になる日、前任の鈴木様の最終日を書いた画面です。「保存する」を押す前の状態です。データは架空です。
クライアント情報の入力欄は「クライアント名」「メールアドレス」「電話番号」「住所」「メモ」の5つで、先方の担当者名を入れる専用の欄はありません。担当者の交代は「メモ」に日付つきで書いておきます。
TASKULでできないこと
取引先が1〜2社で、担当者の交代もめったに無いなら、メールの下書きと手元のメモで足ります。
取引先の担当者が変わるたびに、案件と先方にお願いしている作業を拾い直す手間がかさんできたら、TASKULのFreeプランで、取引先ごとの案件と確認待ちを1つの画面に並べてみてください。
担当者変更の返信についてよくある質問
担当者変更のメールには返信しないといけませんか?
進行中の案件があるなら返信します。前任者へのお礼と、後任者への確認表つきの連絡の2通です。納品も請求も済んだ取引先なら、前任者へのお礼と後任者への短い挨拶で足ります。
前任者と後任者、どちらに先に送ればいいですか?
前任者へのお礼を先に、連絡が来た日のうちに送ります。後任者への確認表は、前任者がまだ担当のうちに届くように送り、返事の期限を前任者の最終日にそろえると、食い違いを前任者に確かめられます。
後任者から着任の挨拶が先に届いたら、どう返信しますか?
件名は「Re: 担当者変更のご挨拶」のまま返信し、冒頭で「ご丁寧にご挨拶をいただき、ありがとうございます。」とお礼を書きます。2文目からは、確認表と要確認の質問を添えた例文②と同じです。
後任者から挨拶が来る前に、こちらから連絡してもいいですか?
はい。進行中の案件があるなら、後任者の挨拶を待たずに確認表を送って差し支えありません。後任者の連絡先が分からないときは、前任者への返信で連絡先を尋ねます。
引き継ぎ確認表は全部の案件ぶん送るべきですか?
作業中の案件と、請求や入金が残っている案件だけで足ります。月額の保守のように毎月続く仕事は入れます。納品も入金も済んだ案件は入れません。
後任者に前任者との約束を伝えても「聞いていない」と言われたら?
決めた日とメールの件名を添えて、事実の確認として聞き返します。メールで記録の無い口頭の約束は、要確認として後任者と決め直し、その返事のメールを新しい出どころにします。範囲や金額を変えるときは、追加見積か見積の出し直しが必要です。
担当者が変わったのを機に、単価や支払条件を見直してもいいですか?
見直す相談はできますが、担当者変更の返信や確認表には混ぜません。引き継ぎが落ち着いてから、別の連絡で切り出します。切り出し方は取引先ごとに単価の改定を伝える値上げ交渉のメール例文を参考にしてください。
まとめ|担当者が変わったら、前任者にお礼を、後任者に確認表を送る
担当者変更の連絡が来たら、その日のうちに前任者へお礼を返し、後任者には進行中の案件の確認表を別の1通で送ります。確認表には8項目を書き、決まっていることには決めた日とメールの件名を、口頭で決めたことは要確認に入れます。
返事の期限を前任者の最終日にそろえると、食い違いをその場で確かめられます。
後任者が前の取り決めと違うことを言ってきたら、出どころを添えて事実の確認として聞き、範囲や金額を変えるなら追加見積か見積の出し直しにします。取引先と案件が増えて、確認表の材料を集め直す手間が重くなってきたら、TASKULのFreeプランで、取引先ごとの案件と確認待ちを並べる使い方を試せます。
